将棋界の偉人伝~史上初の三冠・升田幸三~
かつて不世出の大名人、木村義雄、大山康晴とまっこうから対決し、
ファンを魅了し熱狂させ続けた棋士がいました。
その人の名は升田幸三。「新手一生」を掲げ、
常に「魅せて勝つ」ことを己に課していました。
トータルでの実績ではライバルだった大山名人に適わぬものの、
ここ一番という大勝負で奇手を指すその棋風は、
半ば伝説的な存在として今でも多くのファンに愛されている人です。
彼の人柄がよく表れているエピソードとして、
GHQに乗り込んだお話があります。
戦後、日本はGHQの統治化に置かれたましたが、
「取った駒を酷使する将棋は、捕虜酷使の思想につながる」として
将棋を禁止しようとしました。
これは強引な言いがかりに近いものですが、将棋禁止になってしまっては、
将棋連盟はたまったものではありません。
連盟はGHQに弁明の場を求め、豪胆で弁もたつ升田を交渉役にします。
彼は、「将棋は人材を有効に活用しているが、
チェスは取った駒を使うことができず、これこそ捕虜の虐待だ。
しかも、キングは危なくなるとクイーンを盾にしてまで逃げる。
これこそ民主主義やレディーファーストの思想に反する」
と反論。これにはGHQも反論の余地がなかったそうです。
ちなみに、公式戦で名人格相手に駒を落として勝ったのは彼だけです。